滋賀県東近江市五個荘金堂町 金堂
(2026/10/04 更新)
滋賀県東近江市の五個荘金堂地区は、近江商人ゆかりの地として知られ、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。田園のなかに商人屋敷や社寺が点在し、舟板塀や白壁の蔵屋敷、掘割がつくる水の流れが、この土地の景観を形づくっています。
五個荘金堂町は、古代条里制の区画の名残をとどめる農村地帯でもあり、もともとの土地のかたちが、いまの町並みにも静かに重なっています。商人の屋敷が町家風ではなく豪農風の佇まいを見せるのも、この地域ならではの特徴です。
町を歩くと、清らかな水が流れる掘割が縦横に走り、錦鯉が泳ぐ様子も見られます。水の気配が近いことは、五個荘金堂の印象を大きく左右していて、建物の輪郭だけでなく、町全体の空気をやわらかくしています。
周囲には、茅葺農家が点在し、寺院の大屋根や鎮守の森が田園のなかに浮かぶように見えます。近江八幡などと比べると、過度に観光地化された印象は強くなく、生活の場としての落ち着きが残っています。近年は、古民家を活かした飲食店なども増えつつあるとされ、古い景観のなかに新しい使われ方が重なっています。
金堂地区では、近江商人屋敷2邸として外村繁邸と中江準五郎邸が公開されており、近江商人の本宅の佇まいを知ることができます。あわせて金堂まちなみ保存交流館も公開されていて、町並みを見て歩く際の手がかりになります。
この地区では、公開施設を通して屋敷の構えや暮らしの気配に触れやすく、単に外から眺めるだけではわからない、商人の故郷としての時間の積み重ねが感じられます。寺前鯉通りを中心に複数の商家が公開されていることも、町の記録をたどるうえで印象的です。
町の中央には、弘誓寺、安福寺、浄栄寺などの寺院があり、集落の骨格を支えています。弘誓寺は真宗大谷派の寺院で、本堂は国の重要文化財に指定されています。安福寺の前には広場があり、金堂町の行事やイベントの会場として使われているとのことです。
また、大城神社や日若宮神社、稲荷神社なども町のなかにあり、社寺が景観の節目になっています。こうした宗教施設の存在は、屋敷や水路だけではない、地域の暮らしの層を感じさせます。
五個荘金堂の地名には、聖徳太子が金堂を建立したという伝承があるとされます。地区内には金堂廃寺跡や、聖徳太子開基伝承をもつ浄栄寺もあり、古い伝承と今の町並みが同じ土地に重なっています。
江戸時代には郡山藩の支配拠点として金堂陣屋が置かれ、その周囲に寺院と民家が配される集落構成がつくられました。のちに近江商人の発祥地の一つとして商いが広がり、郷里に本宅を残しながら各地へ商圏を広げた歴史が、この土地の景観を支えてきました。
主なみどころとしては、近江商人屋敷、金堂まちなみ保存交流館、金堂馬場の五輪塔などが挙げられます。あわせて、寺前・鯉通り、花筏通り、あきんど通りといった通り名も、町の歩き方を意識させます。
五個荘金堂地区は、商人の繁栄だけを伝える場所ではなく、農村の地割、水路、寺社、屋敷が折り重なって今に続く場所です。建物の保存だけでなく、土地のかたちや水の流れまで含めて町並みが残されていることが、この地区の大きな特徴といえます。
公共交通では、JR琵琶湖線の能登川駅からバスで「ぷらざ三方よし」下車徒歩5分、または近江鉄道本線五箇荘駅から徒歩30分ほどです。町の北西を県道202号佐生五個荘線が通り、能登川駅からのバスも利用できます。
駐車場は普通車100台、大型車20台の案内があり、近江商人屋敷2館は10:00から16:30まで公開されています。定休日は月曜、祝日の翌日、年末年始です。料金は時期により案内があるため、訪ねる際は公開施設ごとの案内を確認するとよいでしょう。
五個荘金堂の町並みは、近江商人の記憶と、農村の地形や水の風景がそのまま残る場所です。派手な演出よりも、屋敷、寺院、掘割、田畑がつくる静かな連なりに、この土地らしさがあります。