神奈川県横浜市神奈川区金港町 横須賀線
(2026/10/04 更新)
田浦駅は、神奈川県横須賀市田浦町一丁目にあるJR東日本・横須賀線の駅です。駅番号はJO04で、1904年に開業しました。横須賀線の中では、近年の乗車人員が少ない駅としても知られています。2024年度の1日平均乗車人員は1,988人でした。
駅は地上駅で、ホームは島式1面2線、駅舎は橋上駅舎です。改札は跨線橋の中央部にあり、両端に入口が設けられています。駅の前後にトンネルがあるため、11両編成の列車では一部のドアが締め切りになる仕組みがあり、かつては「田浦スイッチ」と呼ばれる操作で対応していました。現在は列車情報管理装置によって自動化されています。
田浦駅は、逗子〜横須賀間に官設鉄道の駅として設けられたのが始まりです。その後、横須賀線の所属駅となり、貨物の取り扱い、橋上駅舎化、自動改札機の設置、Suicaの導入など、時代ごとの変化を重ねてきました。かつては貨物駅としての役割も担っていましたが、2006年にJR貨物の駅は廃止されています。
駅の周辺には、かつての専用線や貨物に関する痕跡が残っていた時期もありました。現在は道路改良などにより撤去された箇所も増えていますが、田浦という土地が鉄道と港湾、倉庫群と結びついてきた記憶を伝える要素のひとつとして語られています。
のりばは2つで、1番線が横須賀・総武線(快速)上り方面、2番線が横須賀線下り方面です。駅舎にはエレベーターがあり、ホームと改札階、南口を結んでいます。業務委託駅であり、一部時間帯は遠隔対応となるため、改札係員が不在になることもあります。多機能券売機も設置されています。
大きなターミナル駅のような広がりはありませんが、橋上駅舎からホームへ降りる動線や、ホームの前後に続くトンネルなど、地形に沿って組み立てられた駅の姿が印象に残ります。駅そのものが、周囲の山と海、鉄道の線路に挟まれた場所にあることを感じさせます。
駅周辺は、北口と南口で雰囲気が異なります。北口は狭く、周辺には近年建設されたマンションがある一方で、住宅はそれほど多くありません。海上自衛隊の関連施設や倉庫群、工場が立地し、旧海軍時代に建てられた古い建築物も残っています。かつての専用線の跡も確認でき、現在の街並みの中に過去の産業や軍事の記憶が入り込んでいます。
南口側は住宅地が広がり、その先の山林には田浦梅林があります。春頃には梅の景色を目当てに人の流れが見られます。駅前には小さな駅前広場があり、路線バスも発着します。国道16号や神奈川県道206号田浦停車場線との関わりもあり、駅は静かな住宅地と港湾・施設エリアをつなぐ結節点になっています。
田浦駅の周辺は、新しいマンション、住宅地、倉庫群、工場、旧海軍時代の建築物などが重なって見える場所です。整った駅前というより、土地の用途が少しずつ切り替わってきた跡がそのまま街の輪郭になっている印象があります。
また、駅近くの長浦トンネルは、芥川龍之介の小説『蜜柑』のモデルになったといわれています。近隣の吉倉公園には文学碑もあり、鉄道駅の周辺に文学の記憶が重なるのも、この一帯の特徴のひとつです。
田浦駅は、東逗子駅と横須賀駅の間にあります。横須賀線のなかでは小さな駅ですが、海と山、住宅地と施設群のあいだに位置し、通勤・通学の駅であると同時に、土地の歴史を感じさせる駅でもあります。
駅の利用者数は多くはありませんが、その分、駅前や周辺の風景には落ち着きがあります。商業地としてのにぎわいよりも、暮らしの導線や産業の名残、そして梅林や文学碑のような周辺の記憶が、静かに積み重なって見える場所です。