石川県能美市泉台町南1 KAM能美市九谷焼美術館 |浅蔵五十吉記念館|
(2026/10/10 更新)
石川県能美市泉台町南にあるKAM能美市九谷焼美術館の浅蔵五十吉記念館は、能美市出身の陶芸家・浅蔵五十吉を記念する展示館です。旧寺井町時代の1993年に開館した施設で、九谷焼の作家を知る場であると同時に、建物そのものも印象に残る場所として紹介されています。
館内では、浅蔵五十吉の作品を中心に展示されており、訪れた人の感想からも、九谷焼のイメージを少し広げるような作品群であることが伝わってきます。繊細な絵柄だけでなく、大胆な構図や、鳥を題材にした親しみのある風景、現代的な感覚を思わせる表現も見られ、形や色の組み合わせにも個性があります。
この記念館の印象としてよく挙げられているのが、入口まわりの雰囲気です。水の張られた庭園のようなエントランスは、建物に入る前から静かな気配をつくっており、館そのものが一つの作品のように感じられます。現代建築としての存在感も強く、地方の美術館として出色だという声もありました。
入館すると、ロビーでは浅蔵五十吉や展示作品についての映像が流されていることがあり、まずその映像を見てから展示室へ進むと、作品を見るときの手がかりになります。実際の感想でも、作品の背景を知ったうえで鑑賞すると、見え方が少し変わるという受け止め方がされていました。
展示室には浅蔵五十吉の作品が並び、訪問時には二代目や三代目、さらに三代目の御息女である一華氏、その旦那である宏明氏の作も展示されていたという記録があります。展示の内容は時期によって変わることがありますが、少なくともこの場所が浅蔵五十吉の系譜や、九谷焼の表現の広がりに触れられる場であることは伝わってきます。
展示空間は通路の両側に作品が並ぶつくりで、ひとつひとつを急いで通り過ぎるより、少し立ち止まって見るほうが向いています。作品は、角度を変えたり目線をずらしたりすると、色の深みや細部の表情が見えてきます。特に赤絵を中心とした作品や、深い青が印象的な大きな飾瓶「残雪の松」などは、遠目に見た印象と近づいて見たときの印象が変わりやすいようです。
この美術館の周囲には、建物だけでなく屋外の景観もあります。検索情報には、庭先の池に赤絵のお皿が水中に飾られている様子や、空を映す池を見ながら入場するという印象がありました。静かな水面と九谷焼の色彩が組み合わさることで、室内へ入る前から九谷焼の世界に触れるような流れがつくられています。
また、九谷陶芸村内には陶壁ビッグモニュメント「甦 世紀をこえて」もあり、高さ12.9メートル、約6万枚の陶板を使った大きな作品として知られています。銅鐸をモチーフに、森羅万象を表現したものとされ、周辺の景色の中で強い存在感を放っています。美術館の記憶と一緒に、この大きな屋外作品を思い出す人も少なくないようです。
浅蔵五十吉記念館は、九谷焼の伝統的な絵柄を知る場所というだけでなく、九谷焼がどのように広がり、どのような造形や色の表現に向かってきたのかを感じる入口にもなっています。九谷焼に詳しくなくても、展示映像を見てから作品に向き合うことで、見どころが拾いやすくなります。
館内は華美に騒がしいわけではなく、静かな空気の中で作品と建築が互いを引き立てています。建物を外から眺める時間、エントランスの水盤を見る時間、そして展示室で作品の前に立つ時間が、それぞれ切り離されずにつながっているところに、この記念館ならではの記憶が残ります。