愛媛県喜多郡内子町大瀬中央 内子町立大瀬中学校
(2026/09/10 更新)
愛媛県喜多郡内子町大瀬にある内子町立大瀬中学校は、建築家・原広司が設計した校舎として知られています。1992年竣工の鉄筋コンクリート造で、設計は原広司+アトリエ・ファイ建築研究所です。建築専門誌「GA JAPAN」創刊号で紹介されたことでも触れられており、建築分野ではよく参照される存在のひとつです。
この学校は、単に機能を収めた校舎というより、山あいの地形に沿って建物が分かれ、全体として一つの風景をつくっている点に特徴があります。記事の中では、建築そのものが「村の風景を新しく整えている」とも表現されていました。
航空写真で見ると、校舎は山沿いの斜面に合わせて配置されており、運動場側に普通教室、中庭を挟んで特別教室が置かれています。校舎、中庭、特別教室棟が高低差を持ちながら並ぶことで、ひとつの大きな建築でありながら、複数の建物が重なったようにも見えます。
その印象は、原広司が集落のあり方を語る際に用いた「オーバーレイ」という考え方とも重なります。異なるものが幾重にも重なることで、多層的な構造が生まれるという視点です。大瀬中学校では、まさにそうした考え方が、校舎の配置や見え方に表れているように感じられます。
校舎の中庭には、旧校舎に使われていた瓦が敷かれているそうです。新しい建築でありながら、過去の校舎の記憶を受け継ぐような要素が取り入れられている点が印象的です。
また、建物全体はコンクリートや金属板を用いた近代的な印象を持ちながら、屋根には瓦が使われ、軒下の空間も設けられています。場所の気候や周辺の景観に応じて、冷たくなりすぎない表情をつくっているように見えます。屋根は形状や勾配がそれぞれ異なり、雲形を含むいくつかのパターンが確認されたと紹介されていました。
多目的室は廊下を拡張したようなつくりで、理科室や視聴覚室などの特別教室がその上下に階段状に配されています。ひとつながりの空間をそのまま大きく取るのではなく、高さの変化を使って分節していく構成です。
こうしたつくりのため、内子町立大瀬中学校は、単体の校舎というより、いくつかのボリュームが寄り集まった小さな集落のようにも見えます。建築が地形に寄り添いながら、場所の輪郭を整えていることが、この学校の大きな特徴といえそうです。
内子町大瀬は大江健三郎の故郷でもあります。この学校は、古くなった中学校の建替えとして、原広司に設計が依頼されたものだと紹介されていました。大江健三郎と原広司という、同じ地域にゆかりのある二人の名前が重なる点も、この建物を特徴づけています。
建築を見学するとき、機能や素材だけでなく、その土地の記憶や地形との関係が見えてくることがあります。内子町立大瀬中学校は、そうした関係が比較的はっきり感じられる建築として記録されている学校です。