神奈川県平塚市馬入 馬入橋
(2026/07/25 更新)
馬入橋は、国道1号線が相模川を渡る場所に架かる橋です。由来は、相模川の河口近くをかつて馬入川と呼んでいたことにあるとされ、橋の名にもこの地名の記憶が残されています。幹線道路の橋でありながら、地域の呼び名や川の歴史と結びついた存在でもあります。
馬入橋は、近代橋としての架け替えの歴史を重ねてきました。明治11年には初代の木桁橋が架けられ、明治44年には2代目の鋼橋へと更新されています。その後、大正11年に再び架け替えが進められましたが、工事中の大正12年に関東大震災に見舞われ、完成状態だった下部工が崩壊しました。
その崩壊した橋の代わりに、陸軍第16師団および陸軍第15師団が橋梁を架け直し、これが3代目橋梁となりました。さらに、3代目橋梁は老朽化と幅員の不足を理由に架け替えが行われ、4代目橋梁が3代目橋梁の南側に並行して建設されます。現在見られる橋は、昭和55年4月に供用を開始したものです。
国道1号は、日本の主要な幹線道路のひとつです。その道筋が相模川を渡る場所にある馬入橋は、日常の交通を支える橋であると同時に、長い時間をかけて更新されてきたインフラの記録でもあります。川を越えるだけの構造物ではなく、橋の改修や再建のたびに、その時代の技術や社会の状況が反映されてきました。
現在の橋は1980年に供用が始まり、旧橋の役割を引き継いでいます。幹線道路の橋として使われ続ける一方で、過去の架け替えや震災の記憶を背負っている点に、この橋ならではの重みがあります。
馬入橋は、平成10年に日本百名橋にも選定されています。橋の歴史や立地、相模川を渡る景観的な存在感が評価されたものと受け止められます。長い橋の変遷を知ってから眺めると、単なる道路橋ではなく、川と街道、災害と復旧、更新の積み重ねをつないできた場所として見えてきます。
馬入橋は、現在の交通を担う機能とともに、相模川沿いの土地の呼び名や、明治・大正・昭和へと続く橋の変遷を今に伝えています。新しい橋が旧橋の役目を受け継いでいく過程には、地域の移り変わりがそのまま刻まれているようです。川を渡るたびに、その下に重なった時間を思わせる橋です。