茨城県水戸市北見町2-11 水戸市水道低区配水塔
(2026/09/08 更新)
水戸市水道低区配水塔は、水戸駅の北およそ1km、北見町にある国の登録有形文化財です。昭和7年(1932年)に、下市地区へ良質な水道水を供給するために造られました。高さ21.6m、直径11.2mの円筒形の鉄筋コンクリート造で、街中にありながら、どこか建築物らしい落ち着きと、塔としての存在感をあわせ持っています。
レビューでも「丸くて可愛い」「素敵な建物」といった声が見られ、見上げたときの安心感や親しみやすさが印象に残っているようです。水戸城跡や弘道館の見学とあわせて立ち寄られることもあるようで、城下の散策路に自然と組み込まれている建物でもあります。
この塔は、昭和初期の水戸に近代的な水道を整える中で建設されました。低区配水塔は、下市と呼ばれる市東部の低地地区に水を送る施設として使われ、平成11年度をもってその役割を終えています。現在は緊急非常用貯水槽としての備えもあり、敷地は公園として整えられています。
かつての水道施設が、いまは文化財として保存され、散歩の途中に立ち寄れる場所になっているのがこの場所の特徴です。ベンチで休憩できるという声もあり、歴史を見るだけでなく、街歩きの途中で足を止める場としても受け止められています。なお、トイレは使用中止とされています。
設計者は後藤鶴松氏です。低区配水塔の外観は、機能だけを前面に出した建物というより、細かな意匠をまとった近代建築として印象に残ります。塔の中央にはバルコニー風の回廊がせり出し、上部正面の窓や壁面にはレリーフが施されています。上部がアーチ状になった窓、1階入口上部のゴシック風装飾なども特徴です。
レビューでは、説明書きが看板に添えられていることにも触れられていました。見慣れない施設に足を止める人が多く、それに応えるように案内が整えられている様子もうかがえます。見上げる角度によって印象が変わり、夕陽やライトアップに映えるという感想もありました。昼の姿だけでなく、光を受けたときの輪郭もこの建物の見どころのひとつといえます。
水戸市水道低区配水塔は、昭和60年(1985年)に近代水道百選に選ばれ、平成8年(1996年)には国の登録有形文化財になりました。さらに、土木学会選奨土木遺産にも選ばれています。水道施設としての実用性と、近代建築としての意匠があわせて評価されてきたことが分かります。
現在は、時期によりライトアップが行われています。市の案内では、令和8年度の点灯期間として8月、12月から翌年1月、3月から4月の予定が示されていますが、他のイベントと連携して点灯する場合もあるとされています。夕暮れ時や夜の姿は、昼間とはまた違う表情を見せるようです。
この塔の周辺には、水戸城や弘道館といった歴史的な場所があります。そうした場所を歩く途中で、給水塔という近代の施設に出会うと、城下町の時間の層が少し立体的に見えてきます。武家の記憶が残るエリアに、昭和初期の水道施設が並んでいること自体が、水戸の街の歴史をよく示しています。
建物そのものは大きくても、丸みのある輪郭や装飾のある外観のためか、冷たい印象よりもどこか柔らかさが残ります。保存された近代建築を、散歩の途中で気軽に眺められる。水戸市水道低区配水塔は、そんな街角の記録として覚えておきたい場所です。