旅旅

桜の季節にだけ開かれる本庄水源地堰堤水道施設を歩く

広島県呉市焼山町 本庄水源地堰堤

(2026/07/23 更新)

本庄水源地の現在の姿

広島県呉市焼山北にある本庄水源地堰堤水道施設は、現在も稼働している水道施設です。そのため、ふだんは非公開で、見学できるのは毎年桜の開花時期の一部に限られています。入力された記録でも、2026年1月下旬の平日には上下とも閉鎖されていて入れなかったとあり、季節以外の時期には立ち入れない場所であることがうかがえます。

桜のころには一般開放されるため、地域の花見スポットとして親しまれてきました。水源地のそばには「レイクパーク本庄」もあり、こちらでもお花見ができるようです。訪れた日には、レイクパーク本庄のほうに人が多かったという記録も残っています。

旧海軍が築いた水道施設

本庄水源地は、旧海軍が二河川の本流を堰き止めて貯水池をつくり、大正7年(1918年)に完成した施設です。これにより呉市に軍用水が供給され、余りが市民にも分けられる形で、市民への水道給水が始まりました。

施設は重力式コンクリート造の堰堤を中心に、丸井戸、第一量水井、階段などで構成されています。堤頂部97m、高さ25mという規模で、表面は花崗岩で覆われています。堰堤の中央には取水塔があり、下の第一量水井へ水が流れる構造になっていると紹介されています。

重要文化財として残る景観

この施設は、平成11年に国の重要文化財に指定されています。稼働する水道施設としては全国で初めての指定であり、石貼りの美しい外観と、当時の土木技術の水準を伝える点に価値があるとされています。

現地の記録では、堰堤の外観は美しく、重厚さのある姿が印象に残るようです。周囲の桜とあわせて眺めることで、季節の景色と産業遺産としての表情が重なる場所になっています。長く市内の花見スポットとして親しまれてきた一方で、近年は桜の木が古くなり、以前より花が少なく感じられるという声もありました。

花見の時期だけ開かれる静かな場所

本庄水源地の特徴は、通年で自由に入れる公園ではなく、桜の時期だけ施設の一部が公開される点にあります。そのため、訪れる時期によって見える風景が大きく変わります。桜の下でにぎわう日がある一方、開放期間外は静かに閉ざされ、現役の水道施設としての役割が前面に出ます。

近くのレイクパーク本庄は、芝生の広がる公園として利用されており、水源地の周辺に季節の散歩先が加わるかたちです。水源地そのものは歴史的な施設でありながら、春になると身近な花見の場として地域の記憶に重なって見えてきます。

呉の水道史を今に伝える場所

本庄水源地は、呉市の水道の歴史を考えるうえでも重要な地点です。旧海軍の用水不足に対応するために築かれ、市民給水の始まりにもつながった施設として、呉の近代化を支えてきました。現在も現役であることから、単なる史跡ではなく、暮らしを支え続ける文化財として残っている点が印象的です。

桜の時期にだけ公開されるため、訪問の機会は限られますが、そのぶん一度の見学で、堰堤の姿、取水塔、周辺の花景色をあわせて記憶に残しやすい場所です。呉の街の水道史と春の風景が重なる、静かな記録のようなスポットです。