宮崎県東臼杵郡美郷町西郷田代 美郷町
(2026/09/16 更新)
宮崎県北部にある美郷町では、人口減少対策の一つとして、町内24の行政区ごとに住民が主体となって定住促進の取り組みを定め、実践する「美郷町地区別定住戦略事業 ちくせん」が行われています。地域のことをよく知る住民が、最もやりやすい方法で進めていくという考え方が特徴です。
美郷町は、旧南郷村・旧西郷村・旧北郷村が合併して誕生した町で、人口は4,000人台。中央部を耳川が貫流し、面積の約9割が森林です。そうした土地柄のなかで、各地区の特色や資源をどう生かすかが、ちくせんの大きなテーマになっています。
ちくせんでは、24地区それぞれに実行委員会が組織され、地域の状況に合わせた活動が進められています。町としても補助や人的サポートを行い、町職員や中間支援組織の支援員が伴走する形が取られています。
公式サイトでは、こうした取り組みを長い目で続けるために大切にしていることとして、次の3点が示されています。
誰か一人に負担が偏るのではなく、できる範囲で続けること、地域の未来を悲観するより前向きに捉えること、そして「誰かがやる」ではなく「自分が何をできるか」を考えることが、活動の土台になっています。
ちくせんの活動は、大きく3つの方向性に整理されています。
町の人口減少に向き合うための取り組みです。移住や定住につながる工夫が、この柱に含まれています。
地域が抱える課題に対して、地区ごとに考え、動くための取り組みです。住民が日々の暮らしのなかで感じることを、実際の活動へつなげていく姿勢がうかがえます。
町外の人との接点を増やし、地域との関わりを広げることも目指しています。四季折々の風景や行事の情報発信も、その一部として位置づけられています。
サイトでは、活動マップや24地区全体カレンダーも案内されています。地区ごとの取り組みや、町内で行われる行事の様子を一覧で追えるようになっており、個々の地区の動きが全体の流れの中で見えやすくなっています。
2026年8月には、上野原のふるさと盆踊りレポートや、鬼神野ちくせんの夏の星空教室に関する案内、森の駅きじの関連の延期のお知らせなどが掲載されていました。こうした新着情報からも、地区ごとに異なる表情を持ちながら、季節に応じた活動が続けられていることがうかがえます。
美郷町の基本情報としては、2020年時点の人口が4,826人、面積が44,884ha、森林面積が面積の90%と紹介されています。町の木はモッコク、町の花はウメ、町の鳥はメジロです。
数字だけを見ると静かな印象もありますが、だからこそ、地区ごとの小さな動きや住民の関わり方が、町の将来を支える要素として意識されているように見えます。
サイトには、ちくせんに関する応援メッセージも多く掲載されています。町民が地域を好きになり、自分事として考えることの大切さや、空き家問題への向き合い方、移住前から地域の人と顔見知りになれたことへの感想など、内容はさまざまです。
それぞれの言葉は短くても、地区別に動く仕組みが、単なる制度ではなく、人と人の関係をつくる場として受け止められていることを伝えています。
ちくせんは、町の課題を一括で解くというより、24の地区それぞれが自分たちの方法で考え、動くための枠組みとして続けられています。派手さよりも、住民が無理なく関われる形を重ねながら、定住や交流、地域課題の解決へつなげていく取り組みです。
宮崎県の山あいにある美郷町で、地域の記憶や暮らし方を手がかりに進むこの事業は、町の現在を記録するうえでも、ひとつの大きな軸になっています。