鳥取県岩美郡岩美町大字蒲生 蒲生峠越
(2026/09/12 更新)
蒲生峠(がもうとうげ)は、鳥取県岩美町と兵庫県新温泉町を結ぶ峠で、旧山陰道の道筋にあたる場所です。現在の国道9号線は峠下のトンネルで通り抜けていますが、峠越えの古道は「山陰道 蒲生峠越」として整備され、国の史跡にも指定されています。
現地の案内板によると、峠の標高は356メートル、岩美町塩谷から峠までが2.9キロ、峠から温泉町千谷までが3.2キロで、合計6.1キロの山陰道蒲生峠ルートとされています。いまの道からは、かつての交通の要衝だった面影を、わずかにたどることができます。
入力にある範囲では、旧国道9号線の県境付近に旧山陰街道の案内板が立ち、その近くに延命地蔵が見られます。案内板よりも、二代目の延命地蔵のほうが目に入りやすいという記録もあり、先代は盗難に遭ったと伝えられています。旅人の安全を祈る地蔵が、今も峠の記憶をつないでいるようです。
一方で、旧国道はすっかり静かになり、峠付近は牛舎があるのみという景色も語られています。さらに昔の旧街道になると、畦道や林道のような土の歩道になり、一部には石畳道も残っています。ただし、その石畳は峠のすぐそばではなく、かなり下った場所にあるようです。
舗装された道路から少し離れるだけで、道の表情が大きく変わるのが蒲生峠の特徴です。現在の国道、旧国道、さらに古い山陰道が、同じ地域の中で層のように重なっています。
蒲生峠は、旧街道当時には因幡国と但馬国の国境でもありました。古道として整備された現在も、県境をまたぐ地点としての性格は変わりません。レビューには、山陰と中央を結ぶ重要な地点だっただろうという感想もあり、峠を歩くとその実感があると記されています。
また、近くにはかつて茶屋があったとされ、旅の途中でひと息つく場所だったこともうかがえます。延命地蔵とあわせて、往来する人々の安全や無事を支える小さな拠点だったのかもしれません。
蒲生峠の古道は、石畳や湧水などの風情を感じられる道として紹介されています。鳥取県観光協会の案内では、国道9号線脇から蒲生峠を経て兵庫県新温泉町へ通じる片道25キロの山間の道とされ、歴史の道百選にも選ばれています。
現地の記録では、塩谷から峠までは往路45分ほどとされており、散策路として歩ける区間もあります。もっとも、舗装されていない山道の印象が強く、古道らしい足もとの感触が残る場所です。
一方で、付近は熊や猪の出没地域でもあるため、歩いて探索する場合は熊避け鈴や音の出るものを携帯したほうがよいとされています。静かな山道であるほど、基本的な備えは欠かせません。
蒲生峠をめぐる道は、時代ごとに役割を変えてきました。国道9号の前身である山陰道の峠道から、旧国道、そしてバイパスへと交通の流れが移るなかで、峠越えの道は日常の幹線というより、歴史をたどる歩行路へと姿を変えています。
蒲生トンネルの開通前には、国道9号線沿いの集落を見ながら峠に至ることができたという記録もあり、道路と集落の結びつきが今より近かったことがうかがえます。現在は交通の主役ではなくなりましたが、そのぶん、峠道には土地の記憶や往来の気配が静かに残っています。
蒲生峠は、国道9号線の裏側にひっそり残る旧山陰道の峠です。延命地蔵、案内板、わずかに残る石畳、そして土の歩道が、かつての国境越えの道筋を今に伝えています。車で通り過ぎるだけでは見えない、県境の地形と交通の歴史が重なった場所として、記録しておきたい峠です。