神奈川県鎌倉市由比ガ浜3丁目4-1 和田塚駅
(2026/09/12 更新)
江ノ島電鉄の和田塚駅は、鎌倉駅のひとつ手前にある無人駅です。鎌倉駅からはおよそ800m、徒歩でも10分ほどの距離にあり、駅そのものは大きな構えではありませんが、周辺に広がる街の空気は印象に残ります。駅舎は新しめの建物で、交通系ICカードも利用できます。単式ホーム1面1線の地上駅で、鎌倉寄りと由比ヶ浜寄りの両方から出入りできるつくりです。
江ノ電の駅らしく、電車のすぐそばに街がある距離感もこの駅の特徴です。ホームに立つと、藤沢方面へ向かう電車と鎌倉方面へ向かう電車が交互に行き来し、短い停車の合間に路線のリズムが感じられます。
和田塚という駅名は、近くにある和田一族を慰霊する塚に由来します。周辺は住宅地が中心で、駅前に大きな広場があるわけではなく、日常の生活圏の中に駅が溶け込んでいるような場所です。歴史の名を持つ駅でありながら、現在の風景は落ち着いた住宅地と小さな商いが同居する、静かな街角として立ち上がってきます。
また、由比ヶ浜海水浴場までは約700mほどとされ、海への散策路の途中にある駅としても見られます。海辺に向かう人、鎌倉駅へ歩く人、江ノ電に乗り換える人が、それぞれの目的でこのあたりを通り過ぎていくようです。
駅から歩いてすぐの場所に由比ヶ浜通りがあり、飲食店やカフェが点在しています。線路沿いに面した店もあり、江ノ電の小さな車両と街並みが近く、どこか小洒落た雰囲気をつくっています。大きな商業集積というよりは、通りに沿って店が連なり、歩く速度に合わせて景色が少しずつ変わっていくようなエリアです。
こうした店並びは、観光地としての鎌倉の顔と、日常的な街の息づかいの両方を感じさせます。駅から海へ向かう途中に立ち寄れる店、鎌倉駅までの散策の途中で目に入る店など、移動の流れの中で街を読むような歩き方が似合う場所です。
和田塚駅は鎌倉駅と近いため、電車で一駅だけ移動するよりも、あえて歩いてみるという使い方がしやすい駅です。実際に、鎌倉駅で降りずに和田塚駅で下車し、商店街をぶらぶらしながら鎌倉駅へ向かう、という歩き方をする人もいます。鎌倉から江ノ島方面へ向かうときも、鎌倉駅からこの駅までのんびり歩く流れがあるようです。
駅間の短さや、線路のすぐそばを歩く感覚は、江ノ電ならではのものです。車窓から見る風景だけでなく、駅の外に出てからの徒歩時間も含めて、街の印象がつながっていきます。
2025年5月末の午後に訪れた記録では、駅にいる人は少なかった一方で、電車は混んでいたとされています。由比ヶ浜や鎌倉海浜公園から歩いて和田塚駅に至り、そこから江ノ島方面へ向かった流れは、この駅が単なる通過点ではなく、散策の終点にも起点にもなりうることを示しています。
平日の日中は静かに見えても、朝の通学時間帯には近くの学校へ向かう利用もあるようです。観光の気配と生活の気配が、時間帯によって入れ替わる駅ともいえます。
和田塚駅の周辺には、鎌倉時代にゆかりのある史跡や、線路の脇に寄り添うような飲食店が点在しています。甘味処の無心庵のように、線路を渡って入る場所が知られているのも、この駅周辺らしい話題です。日常の住宅地の中に、歴史の記憶と個性的な店が折り重なり、歩くほどにその層が見えてきます。
大きく目立つ観光施設が集まる駅ではありませんが、駅を降りてからの短い徒歩の中に、鎌倉らしい静けさと街の輪郭が詰まっています。和田塚駅は、江ノ電の旅の途中で、電車と街の距離をあらためて感じることのできる小さな駅です。