旅旅

海に近い常磐線の無人駅・久ノ浜駅を歩く 花壇とレトロな駅前に残る地域の記憶

福島県いわき市久之浜町久之浜 久ノ浜駅

(2026/08/04 更新)

久ノ浜駅について

福島県いわき市久之浜町にあるJR東日本・常磐線の久ノ浜駅は、久之浜町の駅でありながら駅名は「久ノ浜」と表記される、少し印象に残る駅です。明治30年開業の古い駅で、2020年3月14日からは無人駅として営業しています。小さな駅舎には少しレトロな雰囲気があり、駅前には花壇も整えられています。

久之浜町の海岸線からは約500mほど離れているため、東日本大震災の津波被害は受けなかったとされます。一方で、この地区は古くから漁業で栄えた町であり、震災では津波と火事により大きな被害を受けました。今は復興が進み、港も新しくなったという記録が残っています。

常磐線の北寄りにある静かな駅

いわき市内を南北に走る常磐線には、市内だけでも多くの駅があります。その北側、仙台方面から2番目の駅になるのが久ノ浜駅です。普通列車のみ停車するため、特急を使う場合は北側なら広野駅、南側ならいわき駅での乗り換えになります。

かつて国道6号が駅の近くを通っていた時期もありましたが、東日本大震災の被害を受けて国道が新しく内陸を走るようになってからは、駅前の通りも以前とは違う表情になったようです。国道沿いではなくなったことで、立ち寄る機会が少なくなったという声も見られます。

駅前と周辺の風景

無人化された駅には、寂しさが漂っているという感想がある一方で、駅前にはセブンイレブンがあり、徒歩圏内には飲食店もいくつかあります。海に向かう道の途中には町中華の「からすや食堂」も挙げられており、駅から海へ抜ける日常の動線の中に、食事処が点在している様子がうかがえます。

また、駅前の花壇がきれいに整えられていることも、駅を支える小さな手入れの積み重ねとして印象に残ります。大きな観光施設ではありませんが、駅舎や周辺の手入れに地域の手が入っていることが、駅の空気を形づくっているようです。

波立海岸とハッタチアザミ

この周辺では、2008年に波立海岸で発見された新種のアザミ「ハッタチアザミ」が栽培されているという話題もあります。海岸の自生種は津波被害で減少したものの、完全に失われたわけではないとされ、地域の固有種として大切に見られています。

波立海岸に行かなければ見られない植物でもあり、駅で栽培してもらえるとありがたい、という受け止め方もあります。駅の風景の中に地域の植物が加わることで、単なる通過点ではない、土地の記憶を感じる場所になっているのかもしれません。

近くの海へ、土地の時間へ

久ノ浜駅は、海から完全に離れた駅ではなく、少し足を延ばせば海もある立地です。夏場の18きっぷの旅で訪れたら思い出に残るかもしれない、という声もありました。駅そのものは小さく、無人化も進みましたが、周辺には海、港、花壇、食堂、そして地域の記憶が重なっています。

観光地として派手に整えられた場所ではありませんが、常磐線の車窓から降りたあと、駅前でひと息つき、海へ向かう道を歩くことで、この町の変化と静けさを感じられる駅です。復興の歩みの中で、久ノ浜駅は今も町の入口として、淡々と日常を受け止めているように見えます。