旅旅

府中用水と七カ村用水を歩く、多摩川から続く水の道

東京都国立市青柳2丁目22 府中用水

(2026/08/02 更新)

多摩川から引かれた用水路

府中用水は、多摩川から引かれ、国立市から府中市、調布市へと流れ、ふたたび多摩川に戻る用水路です。1693年に開削されたとされ、本町・番場宿・新宿・青柳村・上谷保村・下谷保村・是正村の七か村を通ることから、七カ村用水とも呼ばれます。東京で唯一の疏水百選にも選ばれているそうです。

用水路というと、今では生活の水の記憶をたどる場所でもあります。周辺には湧水地も多く、その水も流れ込んでいるとのことで、単なる水路というより、土地にしみ出した水を集めながら流れる細い川のような印象があります。

ゆったりとした流れのある風景

この日は水の流れがゆったりしていて、鴨がのんびりと浮かんでいました。春先にはまだ水が流れていない時期もあったようですが、季節が進むと、少しずつ水の表情が見えてくる場所なのかもしれません。

派手な見どころが並ぶというより、歩く速度に合わせて景色が変わっていく散歩道です。水面を見ながら歩くと、住宅地のあいだに細く続く水路の存在が、街の地形をそのまま映しているように感じられます。

散歩道としての府中用水

近辺は散歩道としても歩きやすく、用水路沿いをたどるだけで、街の水の流れと暮らしの距離感が見えてきます。舗装された道や住宅地の景色のなかに、水路が静かに入り込んでいるため、日常の延長として歩けるのもこの場所らしさです。

用水路は、かつての農地や村のつながりを今に残す存在でもあります。現在はその役割が変わっていても、土地の下を流れてきた時間までは消えていないように思えます。ゆっくり歩くと、ただの水路ではなく、地域の記憶をたどる細い道として見えてきます。

水とともに残る地域の記憶

府中用水は、東京の中でも限られた疏水のひとつとして知られていますが、実際に沿って歩くと、まず感じるのは規模の大きさよりも、静けさや生活感です。鴨が浮かび、湧水が加わり、流れは土地の勾配に沿って淡々と続いていきます。

多摩川の水を引いてきた歴史、七か村を通ったという名前の由来、そしていま目の前にある穏やかな流れ。その重なりが、府中用水をただの用水路ではなく、街の中に残る水の記録として印象づけています。