青森県上北郡六戸町大字折茂 稲生川
(2026/10/01 更新)
青森県十和田市にある稲生川用水は、農林水産省の「疏水百選」に選ばれた農業用用水路です。旧十和田湖町のあたりから太平洋へ注ぐ延長約30kmの水路で、約150年前に南部盛岡藩士・新渡戸傳が上水工事に着手し、上流約10km部分を完成させたと紹介されています。
この水路の整備によって、荒涼とした台地が広大な水田地帯へと変わり、現在の十和田市の基礎につながったとされています。単なる水路というだけではなく、土地の姿そのものを変えてきた地域の記憶をたどる場所でもあります。
稲生川用水をめぐるウォーキングコースは「太素ウォーク」と名付けられています。コースはAコースが約22km、Bコースが約14kmで、歩行時間はそれぞれ約5時間、約3.5時間と案内されています。
行程には、稲生川取水口から稲生川沿い、稲生川遊歩道をたどり、Aコースでは一本木沢ビオトープを経て太素塚へ向かう流れが示されています。長く水路に沿って歩く構成で、用水の役割だけでなく、周囲の景観や施設も含めて見ていくコースになっています。
紹介文では、コース上に「幻の穴堰」「山の神の碑」など、開拓当時の遺構があるとされています。各所には説明看板も設置されており、歩きながら水路の成り立ちや開拓の歴史を確かめられるつくりです。
実際の案内では、同行する改良区職員や県職員からの説明もあるとされ、地域の水利施設を見学するだけでなく、背景にある技術や労力に触れやすい点が印象的です。水路の風景と歴史の記録が、同じ道筋の中で重なっています。
農業農村整備事業で整備された農村公園、親水水路、ビオトープなどもコースに含まれています。こうした場所では、美しい自然や景観を楽しめると案内されており、水路が地域の農業基盤であると同時に、歩く人の目に触れる身近な環境にもなっていることがうかがえます。
水路沿いには桜並木もあり、紹介文では見頃を迎えていた時期の様子が伝えられています。季節の花と水路の線が重なることで、開拓の歴史をたどる道のりに、やわらかな表情が加わっています。
ウォーキングのゴール地点は「太素塚」です。ここでは上水を記念した「太素祭」が行われていたと紹介されており、参加者は祭のにぎわいの中で歩き終える流れになっています。
出店が並び、名物の馬肉鍋がふるまわれていたことも記されています。長い水路を歩き通したあとに、地域の祭りの気配と食の記憶に触れられるのは、このコースならではの締めくくりといえます。
太素塚へは、JR三沢駅から十和田観光電鉄十和田市行きに乗車し、十和田市駅で下車したのち、南へ徒歩15分と案内されています。太素塚入り口にある大きな鳥居が目印とされています。
稲生川用水は、水路そのものを歩きながら、十和田の台地がどのように開かれ、暮らしと農業の風景が形づくられてきたのかを見つめ直せる場所です。整備された遊歩道やビオトープ、歴史を伝える看板、祭りの場が一体となって、土地の時間を静かに伝えています。