栃木県日光市森友 旧日光街道杉並木
(2026/09/11 更新)
日光杉並木街道は、日光街道・例幣使街道・会津西街道の3つの街道からなる並木道です。総延長は約37kmに及び、約1万2000本もの杉が続いています。日光の風景を代表する場所のひとつであり、日本で唯一、特別史跡と特別天然記念物の二重指定を受けている文化財でもあります。
1992年には「世界一長い並木道」としてギネス世界記録に認定されました。認定された長さは35.4kmとされており、長い時間をかけて受け継がれてきた景観であることがわかります。
日光杉並木の杉は、徳川家康の死後、日光東照宮が造営された頃に、家臣だった松平正綱・正信の親子2代によって植えられたとされています。植栽は1625年に始まり、2025年に植樹400年を迎えました。
栃木県ではこの節目に合わせて、シンポジウムやウォークイベント、ロゴマークの作成、散策マップの配布など、さまざまな取り組みを行いました。杉並木の歴史を伝えるだけでなく、今ある景観を次の世代へつないでいくための動きが続けられています。
街道をたどると、ただ一直線に木が並ぶだけではない、時間の層のようなものが感じられます。背の高い杉がつくる緑のトンネルは、季節や天候によって印象を変え、道の静けさをいっそう際立たせます。
日光街道を宇都宮市方面に向かう森友地区付近には、杉に桜の木が寄生し共生している珍しい「桜杉」や、杉の根元に空洞があり大人4人ほどが入れる「並木ホテル」と名付けられた大木もあります。こうした個々の木々は、長い並木道のなかでも目を引く存在です。
一方で、杉並木は過去と同じ姿をそのまま保っているわけではありません。昭和36年に約1万6479本あった杉は、令和8年時点では約1万2025本となっており、この60年ほどで4,000本以上減少しています。
減少の背景には、杉の老齢化や台風などの自然災害に加え、通過交通量の増加や周辺開発による生育環境の変化があるとされています。景観を守るため、保護基金、オーナー制度、樹勢回復事業、保護用地の公有化、バイパス整備、ボランティア活動など、多方面の取り組みが進められています。
案内では、杉並木公園が散策の入口のひとつになっています。東武日光線の上今市駅からはすぐ、日光宇都宮道路の今市I.Cからも近く、国道119号沿いには無料駐車場もあります。公共交通でも車でも立ち寄りやすく、街道の雰囲気に触れるきっかけとして利用しやすい場所です。
杉並木散策マップも用意されており、街道の成り立ちや見どころを確かめながら歩くのに役立ちます。観光地としてだけではなく、文化財としての重みを感じながら、足元から少しずつたどっていくのが似合う道です。
日光杉並木街道は、華やかな観光名所というより、長い年月のあいだに守られ、手入れされてきた「生きた記録」に近い場所です。日光東照宮へと続く道であると同時に、江戸から現在までの時間が重なって見える回廊でもあります。
立ち止まって杉の幹を見上げると、その高さや古さだけでなく、保護と継承をめぐる現在進行形の営みも感じられます。日光を歩く際には、街道そのものをひとつの文化遺産として眺めてみると、旅の印象が少し変わって見えるかもしれません。